年少者に対する夜間外出禁止条令は、大都市200のうちの150市、全都市387のうち270市で実施されている。アメリカでは、これらの条例違反により年間8.5万人の逮捕者が出ることもある。
しかし、夜間外出禁止は、市の条例によるものであり、内容もまちまちで、自動車による夜間外出を規制したものもある。また、夜間外出禁止例そのものに対する裁判所の判断もそれぞれの市で異なっており、合憲から違憲まで多様な判決が下されている。いずれにせよ、日本では考えられないような夜間外出禁止令が現に生きていて逮捕者が出ているのも、自由の国アメリカの一面である。
● クリントン大統領の公約
クリントン大統領は、18歳以下の若者に対し授業のある日は午後8時から、夏期は午後9時から、また週末は午後11時から通りに出ない、という主旨の外出禁止令を市当局が制定するよう提案している。(STARS AND STRIPES、 1 NOV 96、 THE ASSOCIATED PRESS)
● ミズーリ州における夜間外出取締の実態
ミズーリ州フェイエット市では、年少者は夜の8時から朝の6時まで夜間外出禁止になっている。同市では、この夜間外出禁止令による取締をめぐり暴動が発生した。
同市の警察所長ブライアン・グンゼの話によると、警察官は裁判所前の広場に集まっていた若者のグループに出ていくよう警告した。しかし、16歳の少年が挑発的な態度をとり、始末に負えなくなったため逮捕しようとした。ところが、一人の女性がこれに割って入り、自分の車で警察車を妨害した。警察官は、この女性と他の二、三人を逮捕して引き上げた。
その後、花火や音楽による騒ぎが起こったため、緊張が再び高まった。 100人以上の住民が警察官に石や瓶や55ガロン・ドラム缶を投げつけ、混乱に陥った。結局、催涙ガスと警棒を使って暴動は鎮圧されたが、混乱が住宅地にまで及び、警察所長を含む4人の警察官と住民1人が怪我をした。(STARS AND STRIPES、 4 JUL 97)
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● フロリダ州の自動車による外出禁止令
16歳のドライバーはたとえ運転免許証をもっていても成年者の同伴がなければ午後11時以降車の運転をしてはならないという法案にフロリダ州知事ロートン・チャイルズが署名した。
96年7月1日から実施されるこの条令によると、16歳の若者は、午後11時から午前6時までの間、また17歳の若者は、午前1時から午前6時までの間、仕事のための往復か、21歳以上の成人の同伴がない限り、車の運転はできない。違反者は、52ドルの罰金を支払うことになる。
チャイルズ州知事の報道官カレン・パンコウスキーによると、州知事は、この条令は何も悪いことをしてない子まで罰っすることになるという懸念を抱いていたが、結局、この条令により多くの人命が救われるという最終的な確信に至ったようである。(STARS AND STRIPES、 8 JUN 96)
● 150都市の夜間外出禁止令の実態
外出禁止令に関する大きな研究をいくつか手がけてきた犯罪学者ウィリアム・ルーブルがサウス・アラバマ大学で語ったところによると、現在、200の大都市うち150都市が有効な外出禁止令を持っており、その内の90都市はこの5年間に外出禁止令を制定した。
これらの都市における夜間外出禁止の実態は、次のとおりである。
・夜間外出禁止令に最もひっかかり易い若者は、15歳から16歳の白人男子。
・FBIによると94年には85、156人が外出禁止または徘徊禁止に違反し、逮捕された。
・外出禁止または徘徊禁止に違反し監禁された若者の内、79%が白人、18%が黒人、72%が男子、5%が12歳以下、24%が13歳から14歳、52%が15歳から16歳、19%が17歳。
・違反者の半数は、人口10万以上の大都市における逮捕。
・調査を行った387都市中、70%が外出禁止令を持っていると回答。
・外出禁止の開始時間が最も早いのはニューオルリンズで、学校のある日は午後8時。その他の州の平均は10時か11時。
・外出禁止が適用除外となる特例としては、成年者が同伴している場合、仕事のための往復、教会あるいは監督者のいる活動への参加、等がある。(STARS AND STRIPES、 3 JUN 96、 THE ASSOCIATED PRESS、 BY CALVIN WOODWARD)
● 夜間外出禁止令に対する裁判所の判断
地方自治体が定めた夜間外出禁止令がしばしば地方裁判所に訴えられる。ワシントンD.Cのように完全に違憲判決の出る場合もあれば、一部修正だけで済む場合もある。最近は、ダラス市の例をならって現行の夜間外出禁止令を社会の現状に合うように一部修正しながら問題の解決を図っている自治体が多い。
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・ ワシントンD.C.の夜間外出禁止令に対する違憲判決
ワシントンD.C.の外出禁止条令は、95年9月20日に効力を発揮した。この条令によると、17歳以下の子供達は、平日は午後11時から午前6時まで、週末は午前0時から午前6時まで外出禁止となっている。
これに対し、全米市民自由連合(ACLU)は95年11月、十代の若者8人、親4人及び地方企業の1グループを代表して、この条令を裁判に訴えた。
連邦地方裁判所は96年10月29日、首都ワシントンD.C.における外出禁止条令は年少者とその両親の権利を犯しており、憲法違反であるとの判決を下した。
これに対しワシントンD.C.は、外出禁止条令は子供達の保護に役立っていると主張したが、ワシントンD.C.の連邦地方裁判所判事のエメット・サリバンは、ワシントンD.C.の主張を斥ける判決を下した。(STARS AND STRIPES、 1 NOV 96、 THE ASSOCIATED PRESS)
・ ダラス市の夜間外出禁止条例に対する合憲判決
91年に制定されたダラス市の夜間外出禁止条例は、裁判にかけられた。第5巡回区連邦高裁は93年に、この夜間外出禁止条例を支持する判決を下した。それは、このダラス市の条例には特例条項が設けられており、憲法修正条項第1項で保護されている政治的集会や宗教活動等に参加する夜間外出は適用除外になっているからである。
全米市長会議の調査によると、アメリカでは約270都市が夜間外出禁止条例を持っており、その内約200都市の夜間外出禁止条例は、90年以降に制定されたか、改訂されたものである。
最近定められた夜間外出禁止条例の多くは、ダラス市の条例を参考にしており、今後ともこの傾向は続きそうである。(STARS AND STRIPES、 13JUN 97)
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● 施行50年たったサンディエゴ夜間外出禁止令に対する違憲判決
第9巡回区連邦高裁は今週、1947年に制定され施行50年に及ぶサンディエゴの夜間外出禁止令に違憲判決を下した。判決理由は、同禁止令は余りに曖昧で拘束性が強すぎる、というものである。同裁判所は市に対して、若者の自由と表現の権利を保護する特例を増やすように命じた。また、公園や他の集会所等、公共の場所への立入りを若者に禁止することは、若者の表現の自由を犯すことにもなる、と指摘した。
現行法において若者の夜間外出が許される特例としては、両親あるいは他の責任ある成人が同伴した場合、ならびに仕事、学校の行事、及び親の言いつけによる緊急の使いの往復に限られていた。(STARS AND STRIPES、 13JUN 97)
サンディエゴ市は、早速ダラス市の例にならった。サンディエゴ市議会は97年6月27日、裁判所が夜間外出禁止条例を否認した日から2週間足らずでダラス市の条例にならった9つの特例を設け、新しい夜間外出禁止条例を承認した。
サンディエゴ市の裁判所が市の条例を否認したさいの票決は、僅差によるものであり、外出禁止令の考え方そのものが否定されたわけではない。しかるに、この判決は、古い条例をもっている都市や裁判所は、その条例を見直し、現状に合っているかどうかを確認し、合っていなければ修正する必要のあることを示唆したものと受け取められている。
違憲判決を受けたサンディエゴの条例は1947年にできたものであり、最近の条例では滅多に見られないような古めかしい表現や拘束が多く使われていた。(USA TODAY、30 JUN 97、 BY CHARISSE JONES)
◎ 大規模商店街からの年少者締め出し
果たして、アメリカの年少者外出禁止令のようなものが日本で適用可能なのかという観点からさらに詳しく見てみよう。
● モール・オブ・アメリカにおける保護者なしでの買い物禁止
週末には3、000人に上る十代の若者がミネソタ州ミネアナ・ポリスの郊外にあるアメリカ最大のモールでたむろする。しかし、96年9月20日からは午後6時以降、保護者がいない若者は、身分証明書を提示しなければモールに入れてもらえない。また、金曜日の夜、土曜日の夜は、16歳未満の子供が親の付き添いなしでモールに立入ることは禁止された。
これでミネソタ州では、飲酒は21歳以上、投票権は18歳以上、モール・オブ・アメリカでの買い物は16歳以上、ということになった。(STARS AND STRIPES、 24 AUG 96)
● 立ち入り禁止処置を行ったモール側の言い分
モール・オブ・アメリカの年少者に対する保護者同伴策は、決して年少者を罰したり、立ち入りを禁止にしたりすることが目的ではない。この処置は、顧客、店舗、従業員、子供も含めた、すべての人にとってモールが一層安全な場所になるようにするためである。このことこそ、この処置が外出禁止令とは異なる証しである。子供が行儀良く、商店街の規則にしたがって行動している限り、モール・オブ・アメリカは子供を歓迎する。
週末にもなると、2、000人から3、000人の若者が保護者なしでモールをうろつく。その大半は、ただうろつくだけで、買い物はしない。モールは、広くて常に人で混雑している。しかし、子供は、時には20人から50人のグループに膨れ上り、群れをなして、通路、エスカレーター、店頭を塞いでしまう。喧嘩はするし、口汚いし、時にはお客を威嚇し妨害する。これがさらに深刻な事故につながる恐れもあり、モール側としては、対策をとる責任がある。モールには毎年延べ4千万人(?)の人出がある。その人達の安全確保がモール側の最優先事項である。(USA TODAY、11 SEP 96、BY MAUREEN BRUSCH)
● 立ち入り禁止処置に対する反論
モール・オブ・アメリカは、住民の金を集めるため、この7エイカーを超える世界最大の屋内ショッピング・センターに420店舗と、アミューズメント・パークや遊歩水族館のようなアトラクションを収容している。
週末の夜は、2、000人から3、000人の十代の若者がミネソタ州ブルーミントンの一画に群れをなして集まる。若者は、ますます乱暴になり、はた迷惑で、騒々しい。最近のギャングがらみの若者の衝突があり、少なくとも銃1丁が使われた。
それにしても、モール・オブ・アメリカの対応の仕方は、間違っている。モールの管理者たちは、やりたい放題をやっている若者一人一人を罰する代わりに、実質的にはすべての若者を罰する決心をした。これは、あたかも二、三人の生徒が悪い点数をとったからといって、10年生総員に補修授業を命ずるようなものである。
カリフォルニアやニュージャージー等、少なくとも6州の裁判所は、モールを公共の場所と判定し、その建物の内外に州憲法の言論の自由と集会の自由の権利を適用する判決を下した。
しかも、全米の2、000に及ぶ屋内モールには、ますます多くの地域社会の公共サービスが入っており、モールが私有地であるという弁明は通用しなくなっている。今日のモールには、図書館、警察支所、郵便局、教会、及び公立学校も入っている。あるモールでは選挙の有権者登録や運転免許証の発行まで行っている。いかなるモールといえども、子供が一人で公共図書館に入ってはならない、とは言えないはずである。(USA TODAY、11 SEP 96)
犯罪シリーズはこれにて終了し、次回からは予定通り「アメリカ人の身近で実際的な法感覚」に入ろうと思うが、このシリーズの大半は「アメリカにおけるきわどい手口 (1/5)~(1/5)」ですでに紹介済みであるので、あとは「アメリカ人のなんでも裁判に訴える感覚」について触れた後、次々回からは「生命の倫理――生、死、医」シリーズに入りたいと思う。
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