2012年5月12日土曜日

外交交渉のありかた


外交交渉のありかた

第7部 外交交渉のありかた


この部の目次

1.外交関係
2.外交使節団
3.外交特権
4.不可侵権
5.治外法権
6.領事館って何?
7.領事館の任務
8.領事特権
9.領事館の構成員
10.まとめ


1.外交関係
 この部では、外交交渉について書いていきます。

・外交交渉の国際法

 外交を行うにあたり、必要な国際法に『ウィーン外交関係条約』、『ウィーン領事関係条約』などがあります。
 外交官の存在とその地位は、古くから国際間で認められていました。その為の慣習国際法も、早い段階で確立していました。しかし慣習国際法は法文化されてない為に、しばしば解釈を巡って紛争が発生していました。
 そこで国連は、1958年に慣習国際法をまとめて45ヶ条の確定草案を作成し、1961年に特別外交会議を開き、この条約を採択しました。
 基本的に慣習国際法として通用していたので、この条約はよく守られていると言われています。

・外交関係を結ぶ

 � �家間で外交関係を結ぶには、まず前提条件として相手の国を主権国家として認めなければいけません。これを認めていないと、国家交渉そのものが成り立ちません(当り前ですが)。日本を例にとると、殆ど主権国家なのに、それと認めてないので外交関係を結んでない国に、台湾(中華民国)があります。
 また、外交関係を開設する相手国の同意が必要になります。

 主権国家として認めた後、日本が外交関係を結ぶには、次のような方法があるとされています。

 1)相手国と結んだ条約の中に、外交に関する項目がある
 2)相手国と、外交関係を開設するという内容の文書を交換する
 3)既に外交関係を開設している(もし台湾が独立したら、こうなるかも)

 ただ、これらの方法によって外� �関係を結んでも、外交使節団を派遣するかどうかは別問題です。逆に言えば外交使節団を本国に召還しても、外交断絶をするわけではないと言う事ですね。

・外交断絶!

 国家間の仲が悪くなった場合、断絶もあり得ます。開設するには両国間の同意が必要ですが、断絶は一方的な宣言で済みます。
 大抵、何らかの抗議によるものの断絶が普通でしょう。例えば最近では、台湾を国家として認めたアフリカの国に対し、中国が国交断絶を行っています。
 また戦争を開始した場合は、伝統的に外交を断絶していました。しかし最近では、戦争状態においても外交を続けている例もあります。イラン・イラク戦争の時も、大規模な戦闘が続いていたにも関らず、外交関係は機能していました。
 戦争のよう� �時は、お互い致命傷を負う前に停戦する為に、常に外交チャンネルを開いておく事は好ましいと思えます。


ロイヤル峡谷の橋を建てた人

2.外交使節団
・外交使節団ってなんだ?

 さて、外交関係を開設し、よいよ外交使節団を派遣する事になりました。この外交使節団は、大きく「外交官」と「その他の構成員」に分けられます。
 外交官とは、派遣国に外交交渉をする事を認められた構成員で、使節を受け入れた国(接受国)と外交を行う任務を持っています。
 外交官は使節団の長(大使、公使など)、外交職員(参事官、書記官など)、専門的職務を持った職員(駐在武官など)に大別されます。彼らの任務の一つは派遣国を代表し、国際法の範囲内で接受国において派遣国とその国民を保護する事です。また接受国との交渉、交渉内容の報告、友好関係の促進なども任務になります。ただし、重要な交渉については全権委任状� ��必要な場合もあります。

 外交官になるには本国に認められなければならないのですが、相手国にも同意して貰わなければなりません。同意された場合は「アグレマン(フランス語で同意)」と呼ばれます。逆に相手国は理由もなしに、一方的に拒否する事もできます。これを「ペルソナ・ノン・グラータ(ラテン語で好ましくない人)」と言います。この拒否は、何時でも発動する事ができます。
 嫌な人がいた時は、「ペルソナ・ノン・グラータ!」と言いましょう。外交、若しくはラテン語に詳しくない限り、意味がわからない筈ですよ。

 外交官以外の「その他の構成員」とは、大使館などの事務官、技術職員などになります。

・全権委任状

 これは国が発給する文書であり、条約内容の交渉、 締結、遂行を行うのに、国を代表する者が必要なものです。この全権委任状を提示する者は、条約に関する行為について、国を代表する事ができます。
 ただ、既に国を代表している国家元首、政府の長、外務大臣は、委任状の提示を免除されます。また、条約締結を行う国際会議等に派遣された特別代表も、仕事の性質上、全権委任状を持っているとされ、委任状の提示を免除されます。
 日本では形式上、天皇陛下が認定する事になっています(『日本国憲法』第七条)。


3.外交特権
 次は外交特権について書いていきます。

 外交官は一般の外国人と違い、国を代表し、接受国において重要な仕事をしています。その仕事を円滑に行う為に、外交官は様々な権利が与えられ、また法的義務を免除されています。これを「外交特権」といいます。
 外交特権は大きく分けて外交官を保護する「不可侵権」と、法的義務を免除できる「治外法権」に分類されます。


大統領が選出されたとき、彼らはオフィスを何時間がかかるのですか?

4.不可侵権
 不可侵権とは、外交官、公館、及びその所有物に対して、接受国が拘束したり侵入したりする事ができない、というものです。以下、その内容を見てみます。

1)公館の不可侵

 接受国は大使館などの公館の中に、使節団の長の許可なしに立ち入る事はできません。また不審者の公館への侵入を阻止し、その安全を保護する、あらゆる措置をしなくてはなりません。
 中国において、北朝鮮の亡命者が日本大使館に逃げ込んだ際、中国の警官が公館の中に侵入して捕まえた事が問題になりました。あれは亡命者を見捨てた事とこの権利を侵害されたのに黙って(というより笑って)見過ごした事が議論を呼んだものでした。不審者(この場合は亡命者)の侵入を阻止する事までは、中国 の警官の義務なんですけどね。
 しかしながら、地震や火事など人命に関る緊急時には、例外的に立ち入る事が許されるとしています。
 ちなみに、この公館の種類には、外交官が滞在するホテルの部屋や個人住居も含まれます。

2)財産の不可侵

 公館には、様々な用具や車などがあります。接受国はこれらに対して手出しをする事ができません。例え何かの犯罪の物的証拠として押えたくても、捜索する事すらできません。
 公館内の財産は、あらゆる強制執行から免除されるのです。

3)公文書の不可侵

 外交に関する書類の不可侵権を指します。どのような時、どのような場所においても、公文書を勝手に開封したりはできません。それが公館の外にあっても、外交断絶をしても不可� ��とされるのです。
 これらの書類には、外交官の個人的文書も含まれています。
 また、通信の傍受も同じく行ってはいけません。全ては外交機密として守られなくてはならないのです。

4)身体の不可侵

 外交官はいかなる場合においても、身体を拘束される事はありません。また接受国は外交官に敬意を払い、身体や自由を守る義務があります。
 更に安全上の理由などによる立入禁止区域以外だったら、国内のどこにでも移動できる権利を持っています。
 但し、例外もあります。
 まず、外交官から攻撃を仕掛けた場合は、正当防衛の範囲で反撃を行う事ができます。また、外交官が酔っ払って暴力を振るったりしている時は、拘束する事もできます。

 通常、外交官の名誉を傷つけたり 、傷害を負わせた者は普通よりも重い刑罰を受ける事になります。しかし日本では、かつてはそうだったのですが、法の下の平等の精神により、今日では撤廃されています。


nozzolioセネカフォールズニューヨーク

5.治外法権
 治外法権とは、外交官、或いは公館には接受国の法律は適用しません、というものです。法の治める範囲の外にいる権利って事ですね。もちろん一般の外国人は、滞在する国の法に従わなければなりません。
 外交官の治外法権は、大きく裁判権の免除と、行政権の免除に分かれます。

1)裁判権からの免除

 裁判は、大きく民事裁判と刑事裁判の2種類に分かれています。外交官はこのどちらの裁判も免除されます。つまり外交官は、接受国の刑法に違反していたとしても、訴追・処罰を受ける事がないのです。接受国は当然、犯罪を犯した外交官を逮捕する事ができません。
 但し例外もあります。民事裁判において、不動産、相続、私的職業活動については免除対象になりま� ��ん。
 これでは外交官はやりたい放題か、といえばそうでもありません。同じ国際法に、接受国の法規を遵守するよう定められています。また、それでも犯罪を犯した外交官に、接受国は問答無用で「ペルソナ・ノン・グラータ」を突きつけ、本国へ退去させる事もできます。更に本国で裁判にかけられないと、外交問題に発展し得るでしょう。

 これらの他にも、外交官は裁判の証人として、出頭したり証言する義務を免除されています。

2)行政権からの免除

 行政権、といえば判り辛いのですが、一般的な法的義務からの免除と言う事になります。日本では憲法上の三大義務、納税、教育、勤労がありますが、外交官に勤労の義務は無意味なので(働かない外交官もいるのかも)、基本的に納税の義務の� �除、となりますね。また輸入の際の関税も免除となります。
 とはいえ、全ての税金を免除されているのではなく、消費税などの間接税、相続税、印紙税などは払わなくてはなりません。

 また、国の役務からも免除されています。日本ではないのですが、徴兵制のある国での兵役の免除などです。
 更に健康保険、失業保険などの社会保障の支払いからも免除されています。

 ここまで外交特権について書いてきました。これらの特権は、外交官が働く上で大切なものであり、必要なものであるとされています。まあ、中にはこれを受けて貴族のような特権階級であると勘違いしている外交官も、いるとかいないとか。


6.領事館って何?
 次は領事館について書いていきます。

 上記では、外交官や大使館について書きました。これらは外交をするにあたり、国家を代表して相手国の政府と交渉する役割を持っていました。
 これと比べて領事館は、その国に滞在する自国民と団体を保護する事や、文化交流などを任務としています。


 もともと領事館とは、他国で犯罪を犯した自国民を裁判する為に存在していました。これを「領事裁判」と言います。
 基本的に国家は、国内で犯罪を犯した者は、例え外国人であろうとも裁判にかける権利があります。しかし領事裁判は、その原則を破ったものでした。
 これは主に19世紀を中心として、欧米列強が自分に有利になるよう、アジアやアフリカの国々に押し付けたものです(不平等条約)。日本もまた、アメリカを始めとするヨーロッパ各国に対し、国内に領事裁判制度を設けざるを得ませんでした。
 その後、日本はこの条約の撤廃にあたり、19世紀中に全ての条約の破棄に成功しました。ですが日本は終戦間際まで、中国に対して同じ不平等条約を結んでいま したので、大きな声では言えませんね。

 やがてこれらの条約が撤廃され、1963年に領事関係に関するウィーン条約が結ばれ、現在のような領事関係になっていきました。


7.領事館の任務
 領事関係に関するウィーン条約の第五条には、領事の任務について書かれています。これを元に、どのような仕事があるのか並べてみます。

 1)相手国において、自国民(個人及び法人)の利益の保護
 2)相手国との経済、文化、科学の交流を発展させ、情報提供をし、友好関係を促進させる事
 3)自国民に対して旅券等を発給し、また相手国の国民に対して査証等を発給する事
 4)自国民(個人及び法人)を援助する事
 5)相手国の法律に違反しない範囲で、行政活動をする事

 言ってしまえば、相手国政府と直接交渉をする以外の、全ての外交任務を執り行っている、という感じですね。政府と直接交渉はできませんが、これらの交渉において、相手国の地方機� �との交渉はできます。


8.領事特権
 領事官は外交官と違い、国家を代表しているわけではありません。しかし領事の仕事を行うにあたり、任務に必要な特権を持っています。
 その具体的な内容は、外交官とあまり変わりません。ただ幾つかの点において領事官には認められていない特権もあります。
 例えば公文書の不可侵などです。領事機関の公文書は不可侵ですが、それ以外の文章は領事館の外にある場合にのみ、不可侵ではありません。それは外交機密とはいえないからです。

 また、交通事故や船舶事故などの民事訴訟からの免除もありません。更に領事官を除く事務官等は、裁判の証人とされた場合は、拒否する事ができません(但し、領事の任務に関する事項は別)。領事官も外交官と同様、身体への不可侵があり ますが、重大犯罪を起こした場合は逮捕される場合があります。

 これらの他にも、領事官にも「ペルソナ・ノン・グラータ」制度があり、相手国からこの宣言をされたら、帰国しなくてはなりません。


9.領事館の構成員
 領事官は、原則として派遣する国の国民でなくてはいけません。外国人を採用する場合も、相手国の国民を選んではいけません(但し相手国の同意があれば大丈夫)。


 領事機関の職員は、派遣する国が自由に任命する権利を持っています。派遣国は、これらの構成員の氏名、職種、及び階級を充分な時間的余裕を持って、相手国に通告しなくてはなりません。
 しかし領事館の職員の数は、相手国が合理的且つ常識的な範囲で、要求する事ができます。


10.まとめ
・外交関係を結ぶには、相手の国を国家として認めなければならない。
・外交関係を結んだ場合、外交使節団を派遣するが、必ず派遣しなくてはならないわけではない。
・外交関係を開設するには両国の同意が必要だが、外交断絶は一方的で良い。
・外交官の仕事は、派遣先にて国家の利益保護と、国民の保護を行う事である。
・重要な交渉には、全権委任状が必要になる。
・外交特権とは、外国にいる国民などの権利を守る為、外交官に許された特別な権限である。
・外交特権には大きく分けて、外交官やその所有物に手出しができない「不可侵権」と、その国の法律が免除される「治外法権」に分けられる。
・領事館の任務とは、外国にいる自国民の保護や国際交流である。
� ��領事館も職務上、外交官と同じ様な外交特権を持っている。


目次へ



These are our most popular posts:

外交使節団 - Yahoo!知恵袋

「外交使節団」タグが付いているQAの一覧ページです。「外交使節 ... read more

「ドラクエ5二次SS「グランバニア外交使節団」」/「ザオラル」の小説 [pixiv]

2012年1月7日 ... 王様が似合ってる』って言ってますわね」 「ボヨボヨン、イーイー」 ベホズンも何か言う。 「 フローラ、 ... 君たちを『グランバニア外交使節団』とする」 リオはしっかりと四匹の目を みて言った。 「は…?それは…いったいどういうこと…ですか?」 むさし ... read more

こりゃびっくり! 半島問題の基礎知識

海外などで、何か、マズイこと、悪いことをして非難を浴びたときに、日本人に汚名を かぶせるため、 また日本人ならではの特権(日本 .... サイバー民間外交使節団「VANK」 に大統領表彰」などを見ると、国ぐるみなのは明らかです。 韓国ネチズンは、気に入ら ない ... read more

大使館、公使館、総領事館、領事館の違いはなんですか? - Yahoo!知恵袋

大使館、公使館、総領事館、領事館の違いはなんですか? ... まず、外交のための施設 かどうかで分かれます。 ... 大使館、公使館外交使節団の長が「特命全権大使」である とき、その使節団が公務を行う場所を大使館といい、その長が特命 ... read more

0 件のコメント:

コメントを投稿